★陰陽五行について

「陰陽五行」とは東洋哲学(特に中国)における「宇宙の根本原理」であり、
同時にそれが中国に起源する推命学や易学、或は漢方医学・針灸の根本原理ともなっています。
元々は「陰陽説」と「五行説」は別々のものでしたが、それが中国戦国時代頃に一つとなり
「陰陽五行説」となったものです。
「陰陽五行の理法」とは、全ての事物や現象は
「陰」と「陽」との二気から生じ、
また「陰」と「陽」との相対的な関係を以って存在しているとしています。

更にこの世に存在するすべての事物は、

「木」「火」「土」「金」「水」の五つの要素(五気・五行)
から構成され、
その五行にも各々「陰と陽」があり、
そして、その
五行の相生と相尅の相互関係によって様々な作用と現象が現れるとしています。

 
 日本でも陰陽五行が「陰陽道」を通して、
日本の様々な祭りや儀式、風習・風俗にまで浸透しています。
映画の陰陽師でも有名になったのはつい最近のことですね。
また、日本古来よりある「神道」や、インドに源を置く「仏教」でさえも、
その教理・理論構築の根幹に「陰陽五行説」が用いられています。
茶道の思想の中にも「五行」の考え方が入っています。

このことは、奈良時代頃に日本に請来された『五行大義』という、
陰陽道の最も重要な教科書でもあった書物が、陰陽師達のみならず、
貴族・文化人・仏教僧・儒学者・神道家・医者達によって読まれていたという事実が、
そのことをよく物語っています。
「陰陽道」(おんみょうどう)や「陰陽師」(おんみょうじ)という呼び方自体も、
「陰陽五行の原理を繰る人」という意味に由来しています。
従って、「陰陽五行」は四柱推命学等の占いの理論と言うだけではなく、
日本及び東洋の文化を理解する為の貴重なキーワードなのです。

★五行と十干

五行をそれぞれ陰陽に分けると、十に分類されます。
これは天の気を象徴したものですから、天干と呼ばれています。

即ち、
木は  甲(こう)、乙(おつ)、
火は 丙(へい)、丁(てい)、
土は 戊(ぼ)、己(き)、
金は 庚(こう)、辛(しん)、
水は  壬(じん)、癸(き)です。

その十干に陰陽五行は複雑な意味を持たせました。
五行の木・火・土・金・水をそれぞれ陽を兄(え)陰を弟(と)として二つに分け、十干に割り当てたのです。
それが下の表です。


★五行と十二支

 十二支とは周知の通り「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・鳥・戌・亥」のことで、
現代ではほとんど年末年始のマスコットと化しています。
しかし本来の十二支は十干に組み合わされて使われる陰陽五行思想に基づく理論の一つで、
月齢の周期が一年で約十二回繰り返される事と、
五星(陰陽五行配当表1参照)のなかで最も尊貴とされた木星が12年で天を一周する(厳密には11.86年)ことから、
その運行にしたがって十二年を一つの区切りとして分け、
更に一年ごとに名前を付けたものが十二支なのです。

 ちなみに十二支は年だけではなく月にも日にも時刻にも方位にも配当されています。

つまり地上の事象をすべて5行で分類できるように12支に分類配置したのです。

 さて、この十二支表の中に土気が含まれていません。
五気のうち「木火金水」は十二支に配当されていますが、土気だけは他の四気とは違った配当のされ方をしています。
すなわち、それが「土用」です。
「木火土金水」のなかで、土気は春夏秋冬の四季の終わりのそれぞれの「十八日間」を占めています。
その土気の配当されている期間が「土用」であり、十二支で言えば「辰・未・戌・丑」の各月の中にあります。
この各月は配当表ではそれぞれ「墓気」にあたっています。
「墓気」とは文字の意味の通り、季節の終わりを表している「気」です。
ちなみに「生気」は季節が生まれるつまり季節の始まりを表し、
「旺気」は季節の盛りを表しています。
土用がこの「墓気」の時期に配当されているということにはきちんとした意味があります。

 万物は「陰と陽」というように対立してばかりいるものではなく、循環もしています。
一年を例にとって言えば、陰の冬と陽の夏は互いに相対立するものですが、循環もしているのです。
陰の冬はやがて陽気発動の春となり、陽真っ盛りの夏を経て陰の萌す秋となり、また極陰の冬となります。

次の季節はいきなりやってくるのではなく、徐々に次の季節に移って行きます。
その次の季節へ移っていく過程が「土用」なのです。
「土用」の作用は循環の促進であり、土気と同じく両義性を持っています。
つまり、土気は四気(木火金水)が他の気との相対的な関係において陰の気と陽の気の
両方の性質を持ちうるということに対し、
土気単独の属性として一方において万物を土に帰す死滅作用という陰の気と、
他方においての万物を育みそだてる育成作用という陽の気という
正反対の二つの作用を持っているということなのです。
この土気の両義性を一年の季節の推移において反映させたものが「土用」であり、
過ぎ去るべき季節を殺し、来たるべき季節を育成するものなのです。
「土用」は単に鰻を食べるためのものではありません。

 十二支思想にもこの「土用」に代表されるように
万物循環の思想が色濃く見られます。
十干「甲乙丙丁戊己庚辛壬癸」と同じように、
十二支「子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥」の文字自体にも植物の繁栄の輪廻が表意されています。

 「子」は新しい生命が種子の内部から萌し始める状態、
「丑」は絡むことつまり芽が種子の内部でまだ伸び切っていない状態、
「寅」は草木の発生する状態、
「卯」は草木が地面を覆う状態、
「辰」は草木が伸長する状態、
「巳」は繁栄の極限の状態、
「午」は衰微の兆候が見られる状態、
「未」は成熟が始まって滋味を生じた状態、
「申」は成熟が更に進んでいく状態、
「酉」は完全な成熟に達し滅びの兆候を内包している状態、
「戌」は滅びの状態、
「亥」は生命力が完全に衰えしかし種子の内部には新しい生命が内包されている状態をいうのです。

 要するに、十二支も十干と同じく「子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥」の十二文字に
それぞれ意味を与え、
そのそれぞれの属性による働きと循環によって世界が動いていくと捉える「象徴の世界観」なのです。



★五行の「相生」と「相尅」

 五行には大きく分けて、
「相生」と「相尅」という2つの作用(相互関係)があります。
簡単に言えば
「相生」とは「互いに生じ合う作用」
「相尅」とは「互いに尅し合う作用」のことです。
それぞれには5つの関係があるわけです。
簡単に自然現象に譬えて説明すれば「相生」とは、
「木は火を生じ、火は土(灰)を生じ、土中からは金(鉱石等)が生じ、
金(岩)から水が生じ、水は木を生じ育成する」
という原理となっています。

また「相尅」とは、
「木は根を張って土を尅し、土は堤防となって水を尅し防ぎ、
水は火を尅して消し、火は金を尅して溶かす」作用のことを言います。
五行図で言えば、「相生」は隣同士の関係であり、
「相尅」は1つおいて次の五行との関係となっています。

これらの理論は算命での相性や、自分にとって何がありがたいか、
また自分にとってありがたくないため、どういうようにそれを避けるか、
また順調に行きやすい時期や、障害が多い時期などは
この五行の相生、相克を駆使して判断するのです。

 概ね「相生」は助けられますから吉作用、「相尅」はたたかれます方凶作用と考えられますが、
「相生」必ずしも吉ならず、「相尅」必ずしも凶ならずとなります。
却って凶星が生じられること(相生)によって凶作用を増すこともあり、
逆に凶星が尅されること(相尅)によって、凶星の凶作用が抑制されることがあるからです。
所謂「化凶為吉」「毒を以って毒を制する」「禍転じて福と成す」と言われるようなことが
多々あります。


(1)相生

 「相生」とは互いに「生じ合う」関係のことで、下のような関係となっています。

 
@木生火:「木は火を生ず」
 木は燃えて火を発生させます。
これは、火の立場から言えば、火が燃えるのを木が助けてくれることを意味していますし、
易理から言えば木は「巽」を意味し、これは「風」でもあり、
風(空気)は火の勢いを強めてくれます。
また、木の立場から言えば、木の持っているエネルギーが火となって外に放出されることを意味しています。
良く取れば木の潜在エネルギーが外に現れて他のものを暖めたり、
明るくしたりという貢献をすることでもありますが、
木自体からすれば、消耗して自分がエネルギーを失うことでもあります。


 
A火生土:「火は土を生ず」

 火は燃え尽きれば灰となり土と化します。
また、陶磁器などの作業工程などに譬えますと、
火は柔らかい土を固めて強固な土(器)としてくれます。
又太陽の熱を地面が吸収するという事象に譬えることも出来ます。
適度な火と土の関係は良質の陶器などを生み出すこともありますが、
過度の火と土の関係では、日照りの為に畑が乾いて、
作物を育成することが出来ない土となることもあり、
土の用途と性質によって、「火生土」も良く働いたり、悪く働いたりします。


 
B土生金:「土は金を生ず」

 土中から金(金銀・鉱石・宝石)などが掘り出される事象に譬えることが出来る関係です。
良き山は宝の山となって、宝である金を産出することもありますが、
過度の土は却って「埋金」と言って、金を土に埋もれさせてしまい、
世に出ることが出来なくなることを意味していますので、
この「土生金」の相生関係も吉作用となったり、
時には逆に凶作用となることさえあります。
このように自分の持っている星の五行の強弱により
また、関係する人間や巡ってくる時間の五行によっても
その強弱が変化していきますので
面白くもありまた、その判断はたいへん難しいものになります。


 
C金生水:「金は水を生ず」

 岩間(金)から水が生じることに譬えられ、又は金属の表面に水滴がつくと譬えられることもあります。
金の側から見ると「金生水」は金の潜在能力を引き出す作用であり、
水の側から見ると、金は水を生み出してくれる
「水源」とみなされます。


 
D水生木:「水は木を生ず」

 水は木を育成する作用に譬えられます。
只、水が多すぎると流木となって木が流されてしまうことになりますので、
適当の水であってこそ木を育成する吉作用となるものです。


(1)相尅

 「相尅」とは互いに「尅し合う」関係のことで、下のような関係となっています。

 @木尅土:「木は土を尅す」

 木は土中に根を張ることによって、土を押しのけ土の養分を吸収します。
木(植物)が盛んに繁茂し過ぎると、土は痩せてしまいます。
逆に、土が強すぎて硬くなっても、木が根をはることが出来ず、
木も反尅作用を受けて、枯れてしまいます。


 A土尅水:「土は水を尅す」

 土は堤防となって水が氾濫するのを防ぐ作用をします。
但し、土が強すぎたり、悪い土であると、水は濁ってしまうことになります。
また逆に、水の勢いが強すぎると、土も反尅作用を受けて、
堤防が破れて水が氾濫してしまうこともあります。


 
B水尅火:「水は火を尅す」

 水は火を尅して消す作用をします。
適当な水は火の凶勢を抑えてくれ、水も火の反尅作用によって暖められることもありますが、
強すぎる水は完全に火を消してしまって、火の効用までもなくしてしまうこともあります。
また、強すぎる火に水を注ぐことによって、
却って消すどころか爆発させてしまうことさえもありますので、
他の相尅と違い火と水の相尅関係は注意して見てゆかないと、危険なことがあります。


 
C火尅金:「火は金を尅す」

 火は金を尅して金属を熔かし変形させる作用をします。
金が善用されるには適当の火で鍛錬されることが大切です。
金が器をなし、名刀ともなる為には、火の勢いが金の力量に対して、
適度である必要がありますが、
火の勢いが強すぎれば鋼も完全に熔けてしまい、
器(名刀)をなすことが出来ません。


 
D金尅木:「金は木を尅す」

 金は木を尅し、斧や鋸となって木を伐採します。
木は金によって伐採されて、切り刻まれることによって、人の役に立つ家や家具等の
有用の材となることができます。
切り刻まれ過ぎては木は死んでしまい、有用の材となることが出来ません。
逆に木が堅過ぎれば、木の反尅作用を受けて、
金(斧や鋸)も折れてしまうことがあります。


●五行の気が多い場合

@「木」の気を多が多い場合、その性質は直にして仁心を抱くと言われます。
人に暖かさを与える面が利点です。

A「火」の気が多い場合、カットきやすく猛烈ですが、礼節を尊ぶと言われます。
派手さがどうしても出てしまいます。原色が似合う人が多いようです。

B「土」の気が多い場合、寛大で和と信を重んじると言われます。
人を育み面倒を見るという意味になります。

C「金」の気が多い場合、少し神経質な面はありますが、
剛毅果断で、義を重んじると言われます。

D「水」の気が多い場合、冷静沈着で智恵があると言われます。
悪く言えば人に冷たさを与えてしまう場合があります。


●干支における五行の配当
┌──┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐
│天干│甲│乙│丙│丁│戊│己│庚│辛│壬│癸│
├──┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│五行│木│木│火│火│土│土│金│金│水│水│
├──┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│陰陽│陽│陰│陽│陰│陽│陰│陽│陰│陽│陰│
└──┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘
┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐
│子│丑│寅│卯│辰│巳│午│未│申│酉│戌│亥│
├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│水│土│木│木│土│火│火│土│金│金│土│水│
├─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─┤
│陽│陰│陽│陰│陽│陰│陽│陰│陽│陰│陽│陰│
└─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘


●事象における五行の配当

 ┌──┬───┬───┬────┬───┬───┐
 │五行│ 木 │ 火 │ 土  │ 金 │ 水 │
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │作用│曲 直│炎 上│ 稼穡 │従 革│潤 下│
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │五時│ 春 │ 夏 │ 土用 │ 秋 │ 冬 │
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │五方│ 東 │ 南 │ 中央 │ 西 │ 北 │
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │陰陽│少 陽│太 陽│ −  │少 陰│太 陰│
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │五色│ 青 │ 赤 │ 黄  │ 白 │ 黒 │
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │五声│ 角 │ 徴 │ 宮  │ 商 │ 羽 │
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │五能│ 生 │ 長 │ 化  │ 収 │ 蔵 │
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │五常│ 仁 │ 礼 │ 信  │ 義 │ 智 │
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │五臓│肝臓 │心臓 │ 脾臓 │肺臓 │腎臓 │
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │五腑│ 胆 │小腸 │ 胃  │大腸 │膀胱 │
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │五根│ 目 │ 舌 │ 唇  │ 鼻 │ 耳 │
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │五主│筋・爪│血脈 │唇・肌肉│皮・毛│骨・髪│
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │五志│ 怒 │喜・笑│思・憂 │ 悲 │恐・驚│
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │五情│ 怒 │ 楽 │ 欲  │ 喜 │ 哀 │
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │五感│ 視 │ 聴 │ 臭  │ 味 │ 触 │
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │五味│ 酸 │ 苦 │ 甘  │ 辛 │ 鹹 │
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │五禁│ 辛 │ 鹹 │ 酸  │ 苦 │ 甘 │
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │元素│有機物│熱物質│ 土壌 │金属類│液体物│
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │心理│ 喜 │ 怒 │ 楽  │ 苦 │ 悲 │
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │四神│青龍 │朱雀 │ −  │白虎 │玄武 │
 ├──┼───┼───┼────┼───┼───┤
 │八卦│震・巽│ 離 │坤・艮 │乾・兌│ 坎 │
 └──┴───┴───┴────┴───┴───┘